■下積み18年のストイックな一面も

 ただ、誤解してはならないのは、松本にしても吉岡にしても、本人はいたって真面目でストイックな面がある俳優なのだ。自らが「あざとかわいい」と評されているのも知っているだろう。しかし、それを「芸」の域まで引き上げ切れていない部分が、女性たちの不興を買っていると思われる。そこが、田中や弘中アナとの違いなのだ。

「田中さんや弘中アナはあざとい自分に対して自覚的で、魅力的に自分を見せるテクニックを言語化することにもたけている。自分が周りからどう評価されているかも自覚したうえで、戦略的にそういうキャラをつくり上げているはずです。異性に好かれる努力をしながら、そのテクニックを積極的にシェアしてくれる田中さんや弘中アナは、女性視聴者から見ても嫌みには映らず、むしろ参考にできるのでウケがいいのです」(前出の週刊誌記者)

 松本が女性からの共感を得るには、イメージを一新する必要があるかもしれない。

「松本さんは2018年放送のドラマ『ホリデイラブ』であざとかわいいキャラでブレークしたせいか、そのイメージを引きずっている視聴者が多い。ただ、見方を変えれば、それだけ彼女の演技力が優れているということ。一歩踏み込んで、ポンコツな自分をさらけ出して女性の笑いや共感を生むことができれば、一皮むけるのではと思います。男性関係の決定的なスキャンダルもないので、実は広告業界の受けは悪くないですし、大化けするポテンシャルはあると思います」(前出のテレビ誌編集者)

 芸能評論家の三杉武氏は、松本の「仕事に対するストイックさがアダになっているのでは」と述べる。

「松本さんはブレークまで18年もの長い下積み時代を経験しています。中学生のころは地元でも有名な美少女で、スカウト後にほどなくドラマで俳優デビュー。ファッション誌のモデルとしても起用され、周囲からも活躍が期待されましたが、ブレークすることなく長い下積み時代に突入しました。芝居の稽古に1日最大6時間、週5日通う生活を送っていたそうで、当時はお金や気持ちに余裕もなく邦画は見られなかったと語っています。実際の松本さんは、決して世渡り上手とはいえない、不器用な努力家タイプなのではないでしょうか。長い下積み時代を経験した苦労人で、仕事に対してストイックに取り組むあまり、“あざといキャラ”もやりすぎてしまうのでは。松本さんの素の魅力が世間により浸透すれば、女性視聴者の見方も変わると思います」

 本当の意味で“自然体”になれたとき、女性からの評価も一段とアップするかもしれない。

(雛里美和)

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雛里美和

雛里美和

ライター。新宿・十二社生まれの氷河期世代。語学系出版社から邦ロックシーンを牽引するライブエージェント(イベンター)を経て、独立。教育からエンタメまで幅広い分野で活動する。

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