ソーシャルメディア研究会が開催する「オフラインキャンプ」の一コマ。リアルな体験が、「スマホなし」で過ごす自信につながる(写真:兵庫県青少年本部提供)

 一方で、甲南女子大学の冨田さんは、SNSトラブルの被害者にも加害者にもならないためには「スマホ以外の楽しみを持ってほしい」と言う。人間関係で悩んだり勉強がうまくいかなかったり、家にいてもやることがなく、スマホが逃げ場になっているケースも少なくない。その場合は、スマホが面白いのではなく、簡単に楽しめるものに流されているだけという可能性がある、と。

「そこで例えば、趣味を持ったりボランティア活動を始めたり、スマホ以外の楽しみがあれば、スマホとの距離も開いてきます」

 そんな中、冨田さんも所属する一般社団法人「ソーシャルメディア研究会」が力を入れているのが「オフラインキャンプ」だ。スマホやゲーム漬けの生活を見直したい小中高校生を対象に、16年からソーシャルメディア研究会が開催し、冨田さんは同研究会のチーフ研究員でもある。

 キャンプは海や山で4泊5日、もしくは2泊3日で行う。約20人の子どもが参加し、研究会の大学生のメンター(相談役)と一緒にカヌーやキャンプファイアなど自然体験をしたりトランプで遊んだり、食事を一緒につくるなどリアルな体験を重ねていく。

 このキャンプの一番の特徴は、スマホを持ち込むこともできる点だ。一日の中にスマホを自由に使える時間が1時間設けられている。だが、日が経つにつれ「スマホなし」で過ごす子どもが多くなると冨田さん。

「リアルな遊びの楽しさを知り、スマホなしで楽しめた経験が、ネットから離れ生活する自信につながる一つのきっかけになっているように思います」

 さらに、高校受験や大学受験、部活でレギュラーに入るなど、「リアルな目標」を掲げることも有効という。目標を成し遂げるために今やらなければいけないことが見えてきた時には、スマホを触っているどころではないと認識するからだ。冨田さんは言う。

「夏休みは子どもとスマホとの付き合い方を見直す貴重な機会でもあります。親子でゆっくり話し合い、楽しく安全に、スマホと向き合える方法を考えてください」

(編集部・野村昌二)

■SNSトラブルに遭った時の主な相談窓口
●一般社団法人セーファーインターネット協会
「誹謗中傷ホットライン」
相談内容に応じて国内外のプロバイダーに削除などを求める通知を出す

●NPO法人チャイルドライン支援センター「チャイルドライン」
18歳までの子どもを対象に相談を受ける

●総務省「違法・有害情報相談センター」
ネット上の誹謗中傷の削除など専門的なアドバイスを受けられる

●法務省「インターネット人権相談受付窓口」
各地の法務局の職員や人権擁護委員が相談に乗る

AERA 2024年7月29日号より抜粋

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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