東京・渋谷のコンビニ。「年中無休」「24時間営業」の表示の上に「7時~23時」の貼り紙が掲示されていた。午前5時の店内は真っ暗だ(写真:編集部 渡辺 豪)
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 コンビニといえば「24時間営業」というイメージが強いが、都心であっても深夜から未明の時間帯は閉店する店が出てきた。背景には働き手不足がある。店長職を兼務するコンビニオーナーの40代男性に実情を聞いた。AERA 2024年7月29日号より。

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 白み始めた空にカラスの鳴き声が響く。午前5時。飲み明かしたとみられる若者グループをあちこちで見かける東京・渋谷のセンター街。そのすぐ近くにあるコンビニの店内は真っ暗だった。ガラスドアには「年中無休」「24時間営業」の表示。そのすぐ上に、「営業時間のお知らせ」の貼り紙が掲示されていた。赤字で「7時~23時」と記されている。

 24時間営業で集客を見込める都心のコンビニも、深夜から未明の時間帯は閉店するケースが珍しくなくなった。背景要因の一つが働き手不足だ。

「2022年2月に1日、休めたのが最後。もう2年以上、休んでいません」

 淡々とした口調でこう打ち明けたのは、都心の別のコンビニの男性オーナーだ。40代。肌つやはいいが、目は少し充血しているように見えた。

 5年前に24時間営業をやめた。今の営業時間は午前6時~午後11時。それでもオーナーがほぼ常に店に出ていないとシフトは埋まらない。店員1人が抜けた今年初めは、1日18時間勤務でカバーしていた時期もあった、と男性は振り返る。

「自宅に戻るのは風呂に入るためだけ。2時間後にはまた店に戻る、という繰り返しでした」

 オーナー男性の長時間労働は店長職を兼務していることにも起因する。コンビニの勤務経験者を派遣する会社を通じ、最低限の人員は雇用できるが、店長を任せられるスキルのある人材の確保は年々厳しくなっている。24時間営業をやめたのは経営効率アップの面が大きい、と男性は明かす。

「コロナ禍以降は特に、深夜の人通りが少なくなりました。深夜の営業をやめれば、その分、来客の多い日中の時間帯に人材を集約できます」

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渡辺豪

渡辺豪

ニュース週刊誌『AERA』記者。毎日新聞、沖縄タイムス記者を経てフリー。著書に『「アメとムチ」の構図~普天間移設の内幕~』(第14回平和・協同ジャーナリスト基金奨励賞)、『波よ鎮まれ~尖閣への視座~』(第13回石橋湛山記念早稲田ジャーナリズム大賞)など。毎日新聞で「沖縄論壇時評」を連載中(2017年~)。沖縄論考サイトOKIRON/オキロンのコア・エディター。沖縄以外のことも幅広く取材・執筆します。

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