80年代アイドルにおいては、松田聖子が長年そういう存在だったが、一昨年、ひとり娘の死という悲劇が起き、アンチが影をひそめるようになった。また、中森明菜の根強い人気もかつての悲恋への同情という要素が色濃く、本物の人気とは言い難いところがある。

 スターをスターたらしめる条件はやはり、同情ではなく、羨望や嫉妬なのだ。その点、現状では聖子や明菜より、工藤のほうがその条件を持ち合わせている。久々に新曲を出せば、人気ドラマの主題歌に決まるし、夫や娘たちの仕事もまずまず順調。それゆえ、アンチも同情する必要がなく、安心してたたいたりできるわけだ。

 もちろん、そこには彼女のキャラやイメージも外せない。気さくで気も強そうで、アンチの存在など気に留めないように見えるところが今はプラスに働いている、ということも最後に付け加えておこう。(文中敬称略)

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宝泉薫

宝泉薫

1964年生まれ。早稲田大学第一文学部除籍後、ミニコミ誌『よい子の歌謡曲』発行人を経て『週刊明星』『宝島30』『テレビブロス』などに執筆する。著書に『平成の死 追悼は生きる糧』『平成「一発屋」見聞録』『文春ムック あのアイドルがなぜヌードに』など

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