女優の小泉今日子が、読売新聞の読書委員として、この10年間に紙面に掲載した97冊の書評が集められている。詩集から小説、エッセイ、猫の図鑑まで。それぞれの書評には、出版時に加えられたメモ風の感想が添えられていて、これを読むのも楽しい。この10年間を振り返る巻末のインタビューでは、「私の恩師」である演出家の故・久世光彦の仲介で委員を引き受けた顛末が明かされている。
喜びや悲しみ、悩み、将来への期待と不安……。本の内容に寄り添いながらも、そんな思いをつづることで、作品そのものの魅力を際立たせている。どこに行ってきた、何を食べたという日記のようなエッセイがあふれる中、この本は彼女自身の10年間の感情を記録した優れたエッセイ集ともなっている。
「読み返すとその時々の悩みや不安や関心を露呈してしまっているようで少し恥ずかしい。でも、生きることは恥ずかしいことなのだ。私は今日も元気に生きている」(「はじめに」より)。彼女の素敵な笑顔同様、この書評集は生命力に満ちている。
※週刊朝日 2016年2月12日号