「ライブでも、絶対ここでアップがきたほうがよくない? 俺だったらこのタイミングでキャー!って言いたいもん、とかある(笑)。ここでコールしたいんだよね、もうちょい近く来てほしいよね、って。前回のツアーも、ドームだと上の席の人と離れてるからフロートなるべく高く伸ばしてもらおうよ、って。同じ目線になるからより楽しい。そういうの、大事ですよね」

複眼的な視点を持てるのは、「ネガティブだった」という性格を、意識的に変えよう、広げようと努力した結果なのかもしれない。そう伝えると、照れたように「にゃは!」と笑ってから、真面目な顔を見せた。

「たぶん、見えるんでしょうね。すべてが嫌いだった昔の自分がいて、すべて愛せるようないまの自分を作り出したからこそ、両方の目で見られるんですよね。そこの幅かな。片方の視点しかないと、寄り添えないんです。やっぱりいちばん暗いところを理解していないと。暗いところに落ち込んでしまうことっていっぱいあるんで、寄り添って、なるべくひっぱりあげる。

 人に相談を受けること、多いんです。友達が立ち止まってるときは、俺もそうなってたなってときに感じたこととか思ったこととかを話して、『でもさ、こうなんじゃない?』って伝えて、また歩き出すこともある。それができるのは、両方の視点があるからなのかなって思います」

「10年後の自分」の姿は

最後に、自身のラジオ番組で「20歳のときはいまの自分が想像できなかった」と語っていたことを受け、「10年後の自分」について聞いてみた。

「40かー(笑)。何やってっかなぁ」。朗らかに笑ったあと口にしたのは、「レッドカーペット、海外で歩きたいですね」。

 最近、敬愛する先輩・宮田俊哉がライトノベル作家としてデビューした際、「0から1は僕には生み出せないから尊敬する」と発言していたが、自身が手がける可能性はないのだろうか。

「いままでは僕という1を使った状態でそれを100にしてきたんですよね。創作物という、0から1を作り出す表現の第1歩は、まだ踏み出していない。でも、一度経験したら早いかなとは思いますね」

 もしかしたら10年後までに?

「何かしら生み出してる可能性はあるかな? たぶんやってそうですよね(笑)。まあ、一歩ずつ、踏み出していこうかな」

(構成/編集部・伏見美雪)

AERA 2024年7月22日号より抜粋