AERA 2024年7月22日号より

 でも、僕たち役者っていうのは、体を貸しているだけで、登場人物がどう思っていたかをいかに表現するかっていうところなので。何かを受け取ってもらって、共感してもらえたらいいな、ちゃんと人の心に届けられたらいいな、っていう思いはあります。めっちゃ燃えますね」

自分も相手も尊重することが大事

 常に前向きで、明るく元気なイメージが強いが、「昔は人の顔色ばっかり窺ってた」という。いま、同じように思い悩む人に、人と比べなくてもいいと思えるきっかけを伝えるとしたら?と問うと、「まず、みんな違うのは、個性だと思ったほうがいい」と言い切った。

「まったく同じ個性の人間っていないんで。俺にはこの個性があって、ほかの人にはその人の魅力がある。相手の個性の力を、すごいってちゃんと受け止められることが大事。なんでも比べようとしちゃうんですよ、どうしても。特に日本は、同じことをさせるから、得意不得意が出てくる。しかも、得意な人にみんながフォーカスするから、苦手意識がある側からすると、劣等感がすごく強くなっちゃうんですよ。でも、苦手な分野が見つかってよかった、違う得意分野を見つけよう、でいいと思う。

 上に立つ人も、できないって怒るんじゃなくて、そう考えてあげたほうがいい。だって、できること、できないことは、みんな違うから。もちろん、何でもある程度できることは大事なんだけど、本当に“ある程度”で大丈夫。それよりも、個性を伸ばすべきだなって思います。

 そういうふうに考えられないから『あいつよりも俺のほうが上手いのに』とか思っちゃう。でも、その上手いって感覚も自分の感覚で、周りから見たらまた違うかもしれない。そういう視点を持ったほうがいいですね。

 もちろん、そんななかでも、あいつはあれできていいなって思うことは、やっぱりゼロじゃないですよ。でも、思ってもいい。腐らないかどうかです。こういう動きがしたいんだったら、俺に向いてるのはどういうことなんだろう、できることはなんだろう、って調べるとか、相談するとかね。自分も相手も尊重することが、なにより大事」

次のページ