
多くの試合が行われるパリ五輪だが、歴史的対決も予想される。注目すべきは「バレーボール」のライバル決戦だ。パリ五輪を特集したAERA 2024年7月22日号より。
* * *
1972年のミュンヘン五輪で金メダルを獲得したバレーボール全日本男子(当時はそう呼ばれていた)は一世を風靡(ふうび)した。
当時の監督、松平康隆はメディアミックスを駆使した稀代(きたい)のプロデューサーでもあった。あれから50年が経ち、低空飛行を続けていた男子日本代表が世界ランキング2位まで上り詰め、52年ぶりの金メダルを射程に捉えている。
復興をリードしたのは、フランス人監督のフィリップ・ブラン。核となる石川祐希、高橋藍のふたりにイタリアでの武者修行を勧めただけでなく、選手層も厚くし、攻撃的で魅力的なチームを作り上げた。
日本の前に立ちはだかるのが世界ランキング1位のポーランド。実は監督のブランは、かつてポーランドのコーチとして世界選手権を制覇した。彼は日本とポーランドには共通点があると言う。
「どちらも1970年代に世界の頂点を極めています。しかしその後は低迷を経験し、ようやくそこから抜け出したのです。国民の期待が高いのも同じ。対戦することになれば、メダルをかけた戦いになるだけでなく、両国のバレーボールの未来がかかる戦いになるでしょう」
前哨戦となるネーションズリーグでも対戦があったが、このときブランは石川、高橋を起用せずに温存した。ライバルに手の内は見せられないということだろう。ブランはポーランドを知っているが、ポーランドもブランを知っているということだ。
すでに戦いは始まっている。日本が久しぶりのオリンピックのメダルを獲得するためには、ポーランドを絶対に倒さなければならない。(スポーツジャーナリスト・生島淳)

※AERA 2024年7月22日号より抜粋