フォアハンド、バックハンドとも、その豪打の威力は、車いすテニス界でも屈指。テレビなどの映像を通してではなく、コート脇でプレーを見ると、その迫力はより増す

小3で骨肉腫が判明 入院中に国枝慎吾に憧れる

 この大会で4大大会とパラリンピックのすべてを制し、「生涯ゴールデンスラム」を達成することになる国枝慎吾(40)が、小田の印象について、こんなコメントをしていた。

「本当にスーパータレントだと思います。テニスもかっこいいし、実際、すごく良い球を打つので。いや、本当に近い、すごく近い将来、トップになるんじゃないかな」

 車いすテニス界のレジェンドが、「近い将来」、それも、「すごく」と強調して予見するのだから、間違いない。私も確信した。

 じっくり話を聞きたいと思い、1カ月ほど後に小田の練習拠点である岐阜県岐南町にある岐阜インターナショナルテニスクラブに足を運んだ。

 生い立ちやテニスに出あった経緯などをおさらいした後、開幕間近だった全米オープンの目標を聞いたときの返答が、とがっていた。

「国枝選手の年間グランドスラムを阻止したい。正直、そのためにがんばっています」

 なかなか刺激的な発言だった。

 22年シーズン、国枝は全豪、全仏、ウィンブルドンをすべて制覇し、全米に勝てば4大大会を1シーズンですべて制する「年間グランドスラム」に王手をかけていた。多くのファンが待ち望む偉業を、自分が阻む。4大大会に2回出ただけの少年にしては、相当勝ち気な宣言に思えた。

 ただ、理由を聞いて「なるほどなあ」と納得できた。

「全米オープンで僕が勝てば、38歳の国枝選手が現役を続ける新たなモチベーションにしてもらえるんじゃないかという願いもあって……」

 小田にとって、国枝慎吾はプロ車いすテニスプレーヤーとしての道を開拓してくれた先人であり、競技の魅力に気づかせてくれた恩人だった。 

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