――闘病中の璃花子さんの様子はいかがでしたか。
病気を宣告されたときも、つらい治療を受けているときも、弱音を一切吐かず、懸命に生きようとしていました。本当に強い子だと思いました。
――本には、病室を訪れたトレーナーさんに、「ママにも(マッサージを)やってもらえませんか」とお願いしたというエピソードも紹介されています。
自分のほうがはるかに苦しい状況なのに、私の体調まで気にかけてくれました。
――璃花子さんが小学校に上がる前に離婚し、その後は1人で3人の子を育ててきました。大変ではなかったですか。
夫がいないことが逆に良かった、と思っているんです。もし夫がいたら、困ったときには相手を頼って、本当の自分の力を出せなかったかもしれない。ひとり親で、自分の両足で立つしかなかったからこそ火事場の馬鹿力が出せたし、誰かのせいにせずに生きてこられたと思うんです。

夕方からしか子どもと向き合う時間はありませんでしたし、土曜日も仕事で確かに忙しかったです。ただ、家事の一部は3人の子どもたちが担当し、私の助けになってくれました。壁に円の当番表を貼って、「食器洗い」「お風呂掃除」「洗濯物畳み」などの家事を1人毎日三つずつ担当するんです。どれも重要な家事ばかりをさせます。子どもだからサボることもありますが、そんなときも代わりに私がやることは絶対にしませんでした。子どもが家事をしない上に親がやってあげるのは二重の約束破りだからです。家庭の中でも子どもに責任を持たせるという意味もありました。
食事についても、時間を決め、残してもいいけど、残った分は次の食事はそれを食べてからでなければみんなと同じものが食べられないという約束がありました。そう約束すると、残さずペロッと食べるんです。厳しいように感じられるけど、決して厳しくなく、親はイライラしたりガミガミ叱ったりしなくていい子育てになるんです。子どもが泣いてわがままを通そうとするときは、「泣いてもかまわないけど、玄関で泣いてね」と言って終わり。泣くことは認めてあげるけど、泣くならみんなの迷惑にならないところでね、と。子ども自身に選ばせるようにしています。子どものやりたいことばかりを尊重するのではなく、今の笑顔より将来子どもが幸せになることを考えることのほうが大事だと思っています。

(構成/AERA編集部・深澤友紀)
※AERAオンライン限定記事