黒川氏「定年延長問題」の暗部
一方で、安倍氏の死去から2年がたち、「負の遺産」を払拭(ふっしょく)しようという動きも見え始めた。
安倍政権時には、黒川弘務・東京高検検事長(当時)の定年延長問題があった。発端は20年1月。改正前の検察庁法では、検察官の定年は63歳(検事総長は65歳)と決まっていた。ところが、安倍氏と親交が深い黒川氏が63歳の誕生日を迎える直前になって、突然、安倍政権は黒川氏の定年を半年間延長することを閣議決定した。歴代政府は国家公務員法の規定に基づく定年延長は検察官には適用されないとの見解だったが、安倍氏は「(検察官にも)適用されるように法解釈を変えた」と国会で述べた。
「これも安倍政権の常套手段だったとはいえ、重要な法解釈を閣議決定ひとつで変更してしまうのは論外の所業ですし、その狙いが黒川氏を次の検事総長に就けることにあったのは間違いありません。つまり安倍政権は検察トップ人事に直接介入し、お気に入りの人物を据えようとした。日銀の総裁にせよ、内閣法制局の長官にせよ、あるいはNHKの会長や経営委員などもそうですが、いずれも本来は時の政権から一定の独立性を保って政権の暴走をチェックする重要職責です。しかし安倍政権はそうした役職を次々とすげ替え、お気に入りの人物を送り込み、ついには検察トップにまで手をつけようと謀った。これは幸いにも黒川氏の賭け麻雀問題で頓挫しましたが、歴代の自民党政権でもここまで放埒に人事権を行使した例はありません」