なんとも不思議な選挙という印象だ。2024年6月20日告示・7月7日投開票の東京都知事選は、史上最多の56人が出馬しただけではない。またおよそ都知事選と無関係に見えるポスターが掲示され、問題視されただけではない。取材を重ねるほどに、気味の悪さが残っていく。その正体はいったい何なのか――。
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現職の小池百合子知事が露出を控えるだろうということは予想できた。
4月10日に発売されれた「文藝春秋」5月号は、かねて囁かれていた小池知事の「経歴詐称疑惑」について改めて特集し、2020年に出版された『女帝 小池百合子』にも登場した小池知事のカイロ時代のルームメート、北原百代氏(単行本出版時は匿名)と、かつて側近だった小島敏郎・元東京都特別顧問の証言を掲載。とりわけ小島氏は、前回の都知事選で小池知事に相談を受けて「経歴詐称工作に加担」したことを暴露したうえ、今回は小池知事を刑事告発した。たとえ“カイロ大学卒業”がエジプト政府からお墨付きを得たものであったとしても、身内からの告発は小池知事にとって致命傷になりかねない。
小池知事、序盤は露出を抑え
実際に小池知事は「公務優先」を口実に、告示日である6月20日は多くの聴衆に向けては「第一声」を発しなかった。22日に八丈島を訪れて初めて街頭でマイクを握り、23日には奥多摩の2カ所で演説した。
翌週も露出は最小限に抑えられ、小池知事の演説は、29日には北千住駅前、30日には蒲田駅前で行われた。ここで多少の“異変”が漂った。小池知事にかつてのような勢いがなくなっている点だ。
初挑戦した2016年の都知事選では、小池知事のテーマカラーである「緑色」を持った人たちが演説会場に駆けつけた。小池知事と支援者の距離も、もっと近かったように記憶している。2020年の都知事選はコロナ禍のために自粛されたが、今回の都知事選でもその影響は残っているのか。いや、もっと大きな変化があったに違いない。