2016年の勢いでもって2017年7月の都議選では、自ら率いた都民ファーストの会をして55議席も獲得させた小池知事だが、同年10月の衆院選では、自ら命名した希望の党を躍進させることはできなかった。小池知事は2020年の都知事選では366万1371票も獲得したが、2022年の参院東京選挙区で最側近の荒木千陽元都議を当選させられず、2024年4月の衆院東京15区補選では、自らの代わりに出馬させた乙武洋匡氏は当選どころか供託金没収をかろうじて免れた。

 それでも都知事選で現職の小池知事が強いことに変わりはない。情勢調査の数字を見ても、立憲民主党や日本共産党などが応援する蓮舫氏らをはるかに引き離している。だからわざわざ露出してアンチを招き、その優位を損なう必要はないということだろう。

 だが最後の週にはやや変化が見られている。

情勢調査で石丸氏が蓮舫氏を抜いた?

 7月1日の夕方に、小池知事は“金魚鉢”と呼ばれるガラス張りの宣伝カーに乗り、渋谷などを回っていた。そして翌2日には秋葉原でマイクを握り、3日には三軒茶屋駅前、4日には立川駅前、そして5日には新宿駅前に立っている。

 おそらくは「第3の候補」である石丸伸二氏を意識したのではなかったか。当初の情勢では、小池知事、蓮舫氏、石丸氏を4:2:1強とする調査が多かった。しかし終盤にきて、石丸氏が蓮舫氏を抜いたという調査も出てきたからだ。

石丸伸二氏

 その石丸氏の選挙は奇妙な展開を見せている。ひとつはSNSの利用で、バーチャルの世界で「圧倒的優位」を喧伝。これは4月の衆院東京15区補選で、日本保守党の候補に対して行われたやり方と極めて似ている。

 両者が異なるのは、石丸氏のSNS戦略が“計画的なもの”として見られるのに対し、日本保守党のそれは一部の「ファン」から膨らんでいった点だ。ただネットによるマネタライズ(現金化)である点は共通しており、視聴数を稼ぐために露骨に誇張されたものも散見され、実態とはかけ離れているという事実もある。

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タレントだった「知名度」期待の露出抑え目は有効か