ところがこの計画の背景には、まさにAIの発展と応用が進んだことによって、グーグルの根幹である広告事業で人員が過剰になっている、という事情があるようです。つまり、AI開発をリードしている巨大テック企業が、自らAIの影響を受けて、すでに人の手が余ってきてしまっていることを証明しているに等しいわけです。なお、グーグル単体での従業員数は約14万人とのことですので、じつに20%以上の人がなんらかのかたちでリストラの影響を受ける計算になります。

 でははたして10年後、「たくさん勉強すれば、給料をたくさんもらえていい暮らしができる」と言われ、信じてその道を進んだ子どもたちは、どうなっているでしょうか? もしかすると、どこにも通用しない就活生になってしまっているかもしれません。

 問題は、「たくさん勉強」することがAIにもできるのであれば、いくら勉強したところでこの先立ちゆかなくなるリスクが高い、ということなのです。
 

AIには伝承の必要がない

 なぜなら、AIの登場によって、あるレベルの人間並みの能力は、相互に「デジタルコピー」が可能になってしまったからです。それはまるで、「ドラえもん」の秘密道具「アンキパン」の効果が、永久に有効になったかのような状況です。

 教育は、人類の歴史が作り出した英知の結晶を伝承する営みです。しかし先人はどんどん死んでしまいます。そこで新たに生まれた人は、先人が残した知識や記録、自分よりも経験の多い人を頼って、つねにゼロの状態から、ある程度までの能力を自力で自分に移植しなければならなかったのです。そのために、おじいちゃんおばあちゃん、お父さんお母さん、そして自分の子どもや孫の世代まで同じ内容の勉強が必要でした。

 しかし、AIはこの過程をデジタル化します。AIを使うことさえできれば、一生懸命、能力のコピー作業をしなくても、ゼロからいきなり能力が手に入るようなものです。しかも、能力のデジタルコピー化によって、同時に、全世界の人がそれをできるようになるわけです。

 これは、勉強、そして学びの過程を根底から変えてしまう革命のようなものです。

 その影響は、子どもたちだけではありません。いまさまざまな企業で取り組みが始まっているリスキリング(学び直し)においても、先を見据えた選択をしなければ、がんばって学んでも無駄になる可能性が大いにあるということです。

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