これまでの社会では、基本的な能力として読み書き、国語・算数・理科・社会・英語ができ、その延長として「いい大学」を出ることが能力の証明になってきた面があります。なぜなら、それは事務処理能力の優秀さを示す有力な指標だったからです。
ただ今後、AIが普及すればするほど、事務処理能力自体が必要とされなくなっていきます。たくさん勉強し、いい大学を卒業した新入社員のほとんどは、「基礎的な能力にポテンシャルがあると期待できるが、現時点では即戦力にはならない人材」です。時間をかけて仕事を教え、企業のニーズやクオリティに合う仕事ができるよう、養成する必要があります。
そこに、ChatGPTに代表されるようなAIが現れました。これは10年後に限らず現時点でも、うまく使いこなすことができれば、入社したばかりの新入社員より高い利用価値があります。つまり、AIの実力が「大学を出たばかりの新入社員」だとすれば、会社にとってはAIを使いこなすことがそのまま「社員教育」や「業務上の指示」になります。
そのうえ、社員を雇用するには、給料だけでなく、社会保障や福利厚生も必要です。勤務するためのスペースや備品もそろえなければなりません。年間数百万円のコストとなることは確実です。
半面、AIなら、同じことがもしかしたら1カ月あたり20ドルで実現できるかもしれません。年間にしても数万円程度。もはや検討の余地などないのではないでしょうか。
2023年末、米グーグルが、3万人規模の従業員を配置転換、あるいはレイオフ(一時解雇)することを検討していると報じられ、世界中が驚きました。
グーグルはこの四半世紀、新しいサービスや付加価値を次々に生み出し、世界のインターネット事業をリードしてきた巨大企業です。そして、膨大な検索データを背景に、ChatGPTを追撃すべくAIの開発にも力を注いでいます。