〈勉強〉は「得」だけでなく「徳」がある

 宇宙の歴史は百五十億年といわれます。二兆個もある銀河は、さらに数千億もの恒星で構成される。銀河系の端っこにある太陽系、その惑星のひとつの地球には、五十億年の歴史があります。どういう奇跡か偶然か、地球に生命体が生まれ、そのまたどういう偶然かで人類が二足歩行を始め、手が自由になったので道具を創り、ものを考えるようになり、自分より強いけものを倒せるようになり、定住し、農耕で生活が安定した。言語システムを構築し、文字を発明した。そうした生活を一万五千年ほど続けてきた。

 その宇宙にあって、地球の長い歴史のなかで、ほんの百年程度しか生きられない塵芥(ちりあくた)のような人生を送っているわたしと、隣にいるあなた。あり得ない偶然で相会している二人が、なぜ苦しめあう必要がありますか。

 奇跡的なこの偶然だけでも、互いに親切にする理由には、十分ではないんですか。勉強の「徳」とは、これです。

 生きて、死ぬあいだの、ほんのわずかな瞬間。そのあいだに、なるべく腹を立てない。いらいらしない。微笑んでいる。親切にする。自分のできる範囲で、人を助ける。わたしたちは究極、「人にやさしく」(ブルーハーツ)するために、〈勉強〉しているんです。

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