O157が牛の腸内から検出される割合が変化する理由はわかっていないが、寒い時期には下がるのだという。
「農作物は牛などの家畜に近い場所で生産していることが多く、汚染を受けやすい状況にあると言えます。生野菜には殺菌・加熱の工程がありません。よく洗っても、野菜の表面には細かい毛が生えていることもあり、細菌を完全に洗い流すことはなかなか難しいのです」
調味液が菌のエサに
一方で、過去の事例で問題になっているのが、製造工程における管理の甘さだ。
露店での販売に制限をかけた自治体もある。たとえば、長野県では許可施設以外で作られた「キュウリの浅漬け」は販売禁止だが、味付けをしていない「冷やしキュウリ」は販売できる。
浅漬けに制限があるのは、浅漬けは調味液が栄養となることに加え、漬け込む時間が長いため温度管理が甘くなりがちで菌が増えやすくリスクが高いからだ。
100本中1本でも汚染広がる
浅漬けは、生野菜に塩やうまみ成分などの調味料を加え、数時間から数日漬け込んで作る。このとき、「ひとつの容器で」「長時間」「大量に保管すること」がリスクにつながるという。
「伝統的な漬物の場合、食塩の濃度を高くし、乳酸菌が十分に発酵するまでpHを低下させて管理することで、雑菌の繁殖を抑え、食品の保存性を高めることができます。ところが、浅漬けの場合は漬け込む時間が伝統的な漬物に比べ短いため、こうした働きが機能しにくいのです」
また、添加したうまみ成分のアミノ酸がえさとなり、食塩濃度も低いため温度管理が甘ければ、細菌が大増殖してしまう恐れもある。
たとえば、O157は少ない菌数でも食中毒を発症する傾向がある。
「もし100本のうち1本でも汚染されたキュウリが紛れ込んでいれば、漬け込むことで全体が汚染されてしまうのです」
店での販売となると、一度に大量に作る必要があり、汚染が広がりやすい環境が整ってしまうのだ。温度管理が甘く、うまみ成分などで味付けされていれば目もあてられない。
冷やしキュウリ販売は手軽に見えるかもしれないが、精度の高い衛生管理が求められることになる。