地方と東京の格差は広がる一方だが、東京23区内にも格差が存在する。各種データでそこを分析したのが池田利道『23区格差』である。
まず、所得水準から見ていくと23区のトップ3は、港区の904万円、千代田区の763万円、渋谷区の684万円(2012年)。これは全国の市区町村別所得水準ランキングのトップ3とも重なり、4位に兵庫県芦屋市、9位に東京都武蔵野市がランクインしている以外、トップ10のうちの8件までを23区が占める。ちなみに12年の東京23区の平均所得水準は429万円。港区の住人とはどんな人たちなのか。
港区が日本一リッチなまちになったのはごく最近のこと。03年に六本木ヒルズがオープン、以後、汐留シオサイト、東京ミッドタウン、赤坂サカスと、高級レジデンシャル機能を備えた大規模施設が誕生した結果、人口増加率が上がり、高額所得者が港区に集中したのである。
「田園調布に家が建つ」がお金持ちのイメージだった時代ははるか昔で、今日のセレブというか成り金は要するに都心に住みたがるのだね。
一方、所得水準が最下位なのは足立区の323万円。それでも全国平均の321万円より高く、大阪市や札幌市より上位にランクする足立区は全国的に見れば勝ち組なのだが。
上位グループと下位グループの区を比較して、著者が特に問題にするのはまちの新陳代謝である。転入率も転出率も高く、定住率(20年以上住み続けている人の割合)が低い区ほど、子どもの数が多く活気があって経済力も高いのだと。
とはいえ港区のタワーマンションで暮らすだけが幸せな人生ともいえないからな。じつは23区中、離婚率がもっとも高い区も港区なのだ。離婚後、彼らはとっとと港区を出てしまうらしい。東京はやっぱり見栄っ張りが多いまち。その点、〈足立区は「本音」で生きることを許すまちではないだろうか〉。無理矢理救っている気がしないでもないけれど、案外当たっているのかも。
※週刊朝日 2016年1月22日号