「JULIE with THE WILD ONES」を結成し、加瀬邦彦さん(右)らと「渚でシャララ」を歌うジュリー(左から2人目)=2010年2月(佐藤修史撮影)

 自主レーベルを設立(02年)、還暦記念公演で80曲を熱唱(08年)、ザ・タイガース再結成公演(13年)、さいたまスーパーアリーナでのドタキャン騒動(18年)、映画2本で主演(21、22年)……。そうこうしているうちに、気がつけば、もう何度目だか分からない人気絶頂期を迎え、今や全国各地でチケットの争奪戦が起きています。

 公演会場では、常連のファンに加え、久々にジュリーを見たくなった人、新たに興味をもった若い人の姿も目立ちます。先のインタビューで、沢田さんは「ファンだけじゃ、新たなヒットは生まれない。浮動票を取り込まないとブレークしない」と言っていました。満席の会場を見渡すと、今まさに浮動票が集まっているように見受けられます。

 きっと、そのせいでしょう。ステージでは、「追憶」「渚のラブレター」「明日は晴れる」……とシングル曲が続きました。選曲には、多様な客層に対するファン・サービスという側面もあろうかと拝察します。でも、ファンの中にはわがままな輩もいます。私がそうです(笑)。

一生懸命つくった曲だし

 大好きな「恋のバッド・チューニング」にときめきながらも、「あの曲もやってくれないかなー」と身勝手なことを念じていました。

 ご記憶にないでしょうが、2010年2月19日、東京・武蔵野のスタジオでインタビューした際、こんなやりとりがありました。

――1971年のデビュー以来、毎年必ずアルバムを発表してきました。世界的にも稀有な偉業ですよ。

「でも、去年から(フルアルバムは作らずに)数曲入りのシングルにしたんです」

――どうしてですか?

「毎年つくっていると、使い捨ての曲が増えちゃう。公演で1回しか歌わない曲も出てくるわけですよ。それぞれ一生懸命つくった曲だし、人から書いてもらった曲もあるわけで。無駄にせず、できる限り歌っていきたいんです」

 そこで私はすかさず、1枚の紙をお渡ししました。

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沢田さんは、無表情でしばらくリストに見入り