未知の兵器が飛行する脅威
「在日米軍がこれらの情報を把握しているのに、防衛省や自衛隊が知らなかったとしたら、由々しきことです。日本の防空識別圏内を他国の未知の兵器や機器が飛行している可能性があるわけで、これは大変な脅威です」
日本でも米国と同レベルで、UAPの情報を収集し分析する専門部署の必要性が理解されるようになった。
今月6月、「安全保障から考える未確認異常現象解明議連」が立ち上げられた。議連は「日本版AARO」の設立や、日米間でのUAP情報の共有を目指す。
ゴジラが出たらどうするか
設立総会では、AARO開設につながる活動をした元米国防次官補のクリストファー・メロン氏がリモートで基調講演を行った。そのなかでメロン氏は、継続的な監視網が築かれている航空機やミサイルとは異なり、UAPに対処するには硬直した官僚組織では限界があるとして、政治家が関与することの重要性を訴えた。
「UAPは得体の知れない飛行物体です。政治家が主導してその情報を一元管理できる組織をつくらないと、映画『シン・ゴジラ』で描かれたように、いざ未知の生物、ゴジラが現れたとき、縦割り行政ではどこがどう対処するかで右往左往してしまうでしょう」(浅川議員)
浅川議員はUAPについての報告や研究には、「人権問題」が絡むと訴える。
「偏見を持たれずにUAPを報告したり発言できる環境がないと、『変な人』だと白い目で見られてしまう。それではUAPを報告しようという気持ちにはならないし、精度の高い情報が集まりません」
報告方法を知っていますか?
AAROのホームページには軍人や民間パイロット、一般人に対して、UAPに関する報告方法が詳細に記載されている。
浅川議員の活動がインターネット上で報道されると、「UFOをやる時間があったら、もっと目の前の生活関連の政策をやれ」という内容のコメントがよく書き込まれるという。
「生活の向上をテーマに活動している政治家はたくさんいます。でもUFO、UAPについては私以外、誰もやってこなかった。安全保障上の脅威が確実にあるとわかった今、この問題に手をつけなかったら、将来、もし何か起こったとき、『なぜ、政治も行政も手を打たなかったのか』と非難されるでしょう」
現在も、UAPに対し「宇宙人の乗り物」というステレオタイプのイメージを持つ議員は少なくないという。ある意味で、それは夢のある話かもしれない。
しかし、現実には中国や北朝鮮などの軍事的な脅威が関連する、きな臭い話になっているようだ。
(AERA dot.編集部・米倉昭仁)