米国防総省・AAROが昨年8月に公表した「UAP報告ホットスポット」。報告が頻発している日本近海が赤く示されている

報告書によると半数近くは「気球」

 23年1月、米情報機関を統括する国家情報長官室はUAPに関する報告書を公表した。22年8月時点でのUAPの報告は510件。このうち144件は21年3月までの17年間に報告されたもので、新たに報告された363件のうち、半数近い166件は「気球」だと判明した。

 この結果を知り、記者は「なんだ、UAPの正体は気球か」と、拍子抜けした。

 だが、浅川議員はまったく別の見方をしていた。正体不明の気球について、危機感を抱いていたのだ。

 20年6月、宮城や福島、山形の各県で、上空を白い球状の物体が浮遊しているとの目撃情報が多数、警察に寄せられた。21年9月、青森県で同様の気球が目撃された。これらと似た飛行物体は19年11月、鹿児島県でも目撃されていた。

「UFOの質問」禁止令

 22年秋、浅川議員は謎の気球について、国会で質問しようとした。

 防衛省や自衛隊はこれらの気球を把握していたのか。打ち上げ場所はどこか。目的は何か。もし、気球が降下して毒物や爆弾を投下したらどう対処するのか。

「ところが、質問の通告をしていたにもかかわらず、直前に党から『UFOの質問と間違えられるから』と、質問を止められてしまったんです」

 浅川議員は3年ほど前から国防総省の動きを踏まえて、内閣委員会や衆院安全保障委員会でUFOを調査する重要性を訴え、体制の不備について質問してきた。しかし、「私が『宇宙人の乗り物であるUFOの話をしている』と、非常に誤解されてしまった」。そして、党からUFOの質問をすることを止められてしまったのだ。

「中国のスパイ気球」の出現

 ところが、昨年2月4日、浅川議員の活動への見方が一変する事件が起こった。米当局は本土上空を浮遊していた白い球状の物体を、「中国のスパイ気球」と断定して撃墜。同月14日、防衛省は日本領空内で確認された前述の3件の気球型飛行物体について、「中国が飛行させた無人偵察用気球であると強く推定される」と発表した。

「これを契機に、党からUFO(UAP)に関する質問をすることを許可されました」(浅川議員)

 さらに同年8月、AAROは西日本から中国沿岸にかけてUAPの報告が頻発していることを明らかにした。公表された地図上に日本近海は赤く塗られ、米国周辺、中東と並ぶ「UAP報告ホットスポット」であることが示されている。それは、怪事件が多発したことで知られる大西洋の「バミューダトライアングル」を彷彿させる。

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