
同広報室の胡(えびす)真二・3等海佐(39)は、約10年前に半年間の遠洋航海に出た時のことを、こう振り返る。
「私用のスマホは電波が入らないので、事前に家族や恋人のアドレスを申請して、船に用意された専用の通信端末からメールを打つんです。当時の彼女には、業務の合間を縫って、なるべく毎日メールしていましたね」
胡さんたちの任務は、ソマリア沖・アデン湾を通る商船を身代金目的の海賊から護衛することで、緊迫の毎日だった。海賊が乗る武装漁船に追われている船から「助けてくれ!」とSOSの無線が飛び込んでくることもあり、日に日に疲労が蓄積していったという。
「船乗りは港ごとに女がいる」はホント?
そんなとき、恋人に仕事の大変さを聞いてもらえれば救われることもあるだろう。だが、彼女に弱音を吐きたくなっても、自衛官という職業柄、業務内容を第三者に漏らすことは厳禁だ。過去には、自分が乗っている艦艇の位置情報をSNSにアップして、処罰された隊員もいる。
「自分の状況を詳しく伝えられないので、愚痴りたくても愚痴ることができない。ストレス発散という意味では、寄港先で同僚と飲みに行くことを楽しみにしていました」
かつては「船乗りは港ごとに女がいる」などの俗説も聞かれたものだが、「だいぶフィクションです(笑)。遊ぶ人は遊ぶんでしょうけど、一部でしょうね」と一蹴。胡さんは夜遊びの代わりに、寄港するとプリペイドカードを買って恋人に電話をかけていたという。約15年前の遠洋航海の際は、通話料が10分あたり1000円以上する国でも、携帯電話の電池がなくなるまで話し込み、結果10万円近い請求が来たこともあったとか。