八重野充弘(やえの・みつひろ)/1947年、熊本市生まれ。70年、立教大学卒業。学習研究社(当時)、くもん出版に勤務。92年に作家、科学ジャーナリストとして独立。日本トレジャーハンティング・クラブ代表(撮影/編集部・井上有紀子)

 宝探しの謎解きをしていると、歴史の一場面が目に浮かぶようになった。

 謎解き好きな仲間も集まり、気づけばトレジャーハンター歴は50年。

「1人だったら、ろくなことにならなかったんじゃないかと思います」

 大金をつぎこんで1人で宝探しをする人たちもいた。

「10年、20年でことごとく潰れていきました。こんなにお金をかけたのに見つからなかったらどうしようと悲壮感が漂っていました」

 宝探しといえば、大型重機で山を掘るイメージがある。

「これまで発掘されたなかで一番深くて1.5メートルで、大抵は50センチ以内で出てきてます」

 八重野さんは「1万円あれば宝探しできます」といつも言っているそうだ。スコップなどの掘削道具は数千円でそろう。寄付も受け付けていない。プレッシャーになるからだ。

「金鉱探しとは違うんです」

 隠した人は、どんな理由で、お宝を隠さなければならなかったのか。また、いつかこのお宝を役立ててほしいと、どんな願いを込めて隠したのか。隠した人にストーリーがあったはずだ。

「宝が見つかった瞬間は、隠した人の思いがガーンと伝わってきて、何百年前の人とコミュニケーションが成り立つような気がするわけですよ。ロマンを感じますね」

 ちなみに、活動を続けられるポイントはもう一つある。

「発掘現場の夜、同じ志の仲間と山で焚き火を囲みながら、酒を飲んだり、山で見つけた山ぶどうを食べたり、インスタントラーメンをすすったりするんです。キャンプみたいなものですが、明日お宝が出るかもしれないキャンプです」

(編集部・井上有紀子)

AERA 2024年6月24日号

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