今年3月で開業から1年を迎える北陸新幹線開業。わずか2時間10分~30分程度で首都圏と北陸が結ばれたことにより、開業半年間で利用者はなんと482万人に。前年の特急「はくたか」「北越」と比べて約3倍の伸び(JR西日本調べ)だというから、2015年は“北陸新幹線サマサマな年”だったと言っていい。その一方で、危機に瀕しているのが飛行機だ。
北陸新幹線が開業した昨年3月14日まで、石川県では小松空港、富山県では富山きときと空港が北陸の玄関口として大きな役割を果たしていた。しかし、開業のその日から両空港の利用者は著しく下降線をたどる。小松空港では、昨年夏までに利用者が約3割減少。さらに深刻な富山空港では利用者が約4割も減少してしまった。
こうした状況を受け、昨年8月に冬季ダイヤが発表された際、全日空から両空港に突きつけられたのはこんな現実だった。
「小松―羽田便(ANA)は、来夏ダイヤから1便減便し、5便体制を確保するため、1ヵ月で4500席の上積みが必要」
「富山―羽田便(※ANA便のみ運航)は、来夏ダイヤで(現状の)6便を維持するため、特割運賃以上の利用で1ヵ月に1万500席以上の増加が必要」
2路線のうち、特に厳しい現実を突きつけられたのが富山空港。富山―羽田便を現状維持するためには、1日350席、1便あたり約30席、すなわち利用率約17%の上積みが必要とされたのだ。
●新幹線より飛行機の方が安い!? 富山―羽田便は収入6割減に
富山―羽田便には、北陸新幹線開業のその日からすでに2つの変化が起きていた。
まず1つ目が機種の変更だ。15年3月13日までは、B767(270席)やB777(400席)、B787(335席)など中型機がフライトの中心だったが、新幹線の開業日からは、B737-800(166席・167席)など座席数が4割以下の機種へと小型機化が一気に進み、現在では完全に小型機に置き換えられている。
もう1つが、運賃の大幅な改定だ。開業前日の特割運賃は最安値で1万7890円だったが、開業直後は特割運賃の最安値で1万1290円と、新幹線を利用した場合の東京―富山間の価格1万2730円よりも安く飛行機に乗れる価格設定になった。
しかしこうした対策も新幹線需要には到底かなわなかったようで、冒頭で紹介したように利用率は約4割減、さらに特割運賃の値下げによってANAの収入はなんと約6割も減少するという危機的な事態へと陥ってしまった。