初回分の予約・抽選販売受け付けはすでに終了したが、今後公式サイトで随時追加販売される予定。6月中旬からハンズ新宿店・梅田店・博多店でも数量限定販売される。1本1万9800円(税込み)(写真:キリンホールディングス提供)
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 微弱な電流によって塩味を増強するスプーンが発売された。「高血圧家系」で塩分がちょっと気になる記者が実食してみた。AERA2024年6月17日号より。

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 上が112、下が65。36歳の記者の健康診断通知に書かれた血圧は、今のところまったくの正常値だ。ただ、父はかつて未破裂脳動脈瘤(りゅう)で開頭手術を受け、もう20年以上降圧剤を飲んでいる。父方の祖母も心筋梗塞で大手術を経験した。いわば筋金入りの「高血圧家系」だ。濃い味が好きな自覚もあるので何となく気になって、ここ最近は食品を買うとき、「減塩」と書かれたものに手を伸ばすことが多くなってきた。料理をつくるときは、調味料の量をレシピよりほんの気持ち減らしている。

減塩は社会的な課題

 塩分の取りすぎは日本人の抱える大きな健康リスクだという。

 世界保健機関が推奨する食塩摂取量1日5グラム未満に対し、日本人の平均は1日10.1グラム(2019年国民健康・栄養調査)。減塩は社会的な課題で、食品各社も塩分量をカットした製品開発に注力してきた。我が家の卓上しょうゆは「50%減塩」(メーカー比)、みそは「20%減塩」(日本食品標準成分表比)だが、味に不満はない。それでも、ときに物足りなさを感じるのも事実だ。自分で作った料理に塩を足したくなることがあるし、レトルト食品でも首をひねりたくなることも。

 先日食べたレトルトカレーは「40%減塩」。素材の味は感じられ、ルーだけ口に運ぶとおいしかった。ただ、ご飯と一緒にがつがつ食べるカレーはしっかり濃い味であってほしい。ネットのレビューには「塩を振って食べるとうまい!」などと書かれている。それでは困るのだ。

 だから、この商品には注目していた。キリンの「エレキソルト」。電気の力で塩味を増強するデバイスだという。キリンが味の評価やデバイス開発を担い、明治大学の宮下芳明教授が搭載する技術研究を担当した。22年に発表され、ついにスプーン型で発売された。

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川口穣

川口穣

ノンフィクションライター、AERA記者。著書『防災アプリ特務機関NERV 最強の災害情報インフラをつくったホワイトハッカーの10年』(平凡社)で第21回新潮ドキュメント賞候補。宮城県石巻市の災害公営住宅向け無料情報紙「石巻復興きずな新聞」副編集長も務める。

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