Aさんは住んでいる地域の保護司会に頼まれて引き受けることになった。多いときには一度に11人を担当したという。
 

危険はないのか

 トラブルも時々はあるようだ。

 別のある保護司は、「少年と口論になり、殴られそうになったことがある」と打ち明ける。自宅で少年を面会中のことだった。少年は遵守事項を全く守らず、夜遊びばかり繰り返していた。生活態度を改めるよう指摘したところ、少年は納得せず、口答えをした挙句に保護司をじっと睨みつけ、今にも殴りかかりそうな雰囲気になったという。

 総務省が2019年に公開したアンケート調査によると、一人で面接することに対する不安や負担について、なんらかの不安を感じていると答えた人は26.1%だった。一方、感じていないという回答は「あまり」「ほとんど」を合わせて71.1%にのぼった。

 Aさんは「自分は怖いと思ったことはない」と話す。

「過去に色々あった人たちだけど、人として対等に向き合うように意識すると、不安はそこまで感じません」

 Aさんに限らず、不安に思っていない保護司は多いようだ。対象者と面会する場所について、何かが起きた時にも安全な、公民館などの公共施設があるにもかかわらず、73.4%の保護司が自宅と答えていた。Aさんももっぱら自宅だった。
 

辛いのは再犯の報

 大変なこともある。もっとも辛いのは少年たちの再犯だ。警察から夜中に呼び出されることもしばしばある。

 暴走族に所属する保護観察中の少年が暴力事件を起こした。アルバイトに精を出し更生の兆しが見て取れてきた矢先だった。しかしこれまでに何度も暴力事件を起こしており、少年は少年院送致を覚悟していたという。審判の日。家庭裁判所に呼ばれていなかったが、Aさんは「どうしても陳述したいことがある」と駆け付けた。裁判所内には入れなかったが、調査官と電話で話すことができた。少年が保護観察中に地域のボランティア活動に積極参加していることなどを話し、少年院に入れる必要がないと訴えた。審判の結果、少年院送致とはならず、少年には再び保護観察に加え、1週間のボランティア活動の審判が下された。

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うちで引き受けるよ