容赦ない猛暑がインドを襲っている。一部の地域では学校が休校に追い込まれ、屋外で働く労働者に熱中症の危険が高まる(写真:AFP/アフロ)
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 経済成長著しいインドを激しい熱波が襲っている。連日の酷暑で人が亡くなり、停電でクーラーも使えない。日本人も多く暮らすインドで何が起きているのか。AERA 2024年6月17日号より。

【写真】停電でしばしば動かなくなる「インドの旧式冷風機」

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 インドの北部、首都ニューデリーに隣接するハリヤナ州。この町に暮らし、デジタルマーケティング会社「STORYTELLING」を経営する見上すぐりさん(42)は言う。

「もう、怖くて家から外に出ないです」

 一体、何があったのか。

 インド北部は5月下旬から、激しい熱波で気温が50度を超える記録的な猛暑となっているのだ。ニューデリーでは5月28日に観測史上最高の49.9度に達した。北西部のラジャスタン州では50度を超えたところもあった。地元メディアによれば、この酷暑で5月にインド全土で少なくとも46人が死亡。6月1日まで総選挙が行われていたが、投票所の職員も死亡し、投票率も低迷したという。

追いうちかける停電

 インドはモンスーン到来前の4月から6月までは、ほとんどの地域で常に暑い。しかし、インドに8年暮らす見上さんは、

「50度というのは今までなかった」と話す。

 日本もここ数年、「酷暑」といわれるが、それでも40度前後だ。見上さんは言う。

「うちの近くに小さなカフェがあってそこまで歩くのに3分ぐらいですけど、それがギリです。5分も歩いたら、脱水症状で頭が痛くなります。タクシーに乗っても、エアコンが利いていないと、気持ち悪くなって吐きそうになります」

 外出するのは、午前8時前か夕方の6時以降。コロナ禍以降、見上さんの会社ではテレワークになったが、顧客に会うため先方のオフィスなどに行かなければいけない時は、地下からタクシーに乗り、極力外に出ないようにしているとか。

 うだるような暑さに追い打ちをかけるのが「停電」だ。暑さで電力消費が増え、一部の地域で停電が起きている。

動かぬインド政府

「暑くて眠れません」

 と話すのは、見上さんの会社のスタッフ、スチタ・ムンダさん(23)。彼女が住む一帯は、1日のうち大半は停電しているという。しかも自宅は盆地の密集エリアにあるので、窓を開けると、もわっとした空気が外から入ってきて逆に家の中は暑くなる。

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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