スチタさんの自宅にはクーラーはなく、あるのは旧式の冷風機のみ。停電でしばしば動かなくなる。「食欲が落ちていますが、低エネルギーで乗り越えています」と話す(写真:本人提供)

「昼間はクーラーが利いている友だちの家などに行って、仕事をしています」(スチタさん)

 見上さん一家が住むコンドミニアム(集合住宅)は、停電はほとんどないが、日本のような高性能のエアコンはない。細かい温度設定や風量調整ができず、夜寝ていると利き過ぎて体が冷え、食欲も落ちるという。

「なんでこの暑さの中で仕事をしているんだろう。全てにおいてやる気が起きず、プールにずっと浸かっていたいです」

 と、しみじみ語る。ちょうど子どもたちの学校の夏休みが始まったので、日本人駐在員とその家族の多くは帰国したという。

「私の場合、クライアントとの直接の折衝や、Eコマース(電子商取引)のサイトの立ち上げとかがあって現場に行かないといけないので、帰国できないのです」(見上さん)

 現地の気象当局によれば、6月も繰り返し熱波が襲うという。まだ暑さは続きそうだが、見上さんは「自分たちは恵まれている」と言い、こう続けた。

「暑さで亡くなったり、停電でクーラーも使えず50度の猛暑のなかで生活している人がいます。そういう方たちが、一日も早くちゃんとした生活が送れるようになってほしいです」

 インド政府は基本的に何も動いてくれないという。総選挙の結果、3期目を確実にして勝利宣言したモディ首相にはまず、酷暑対応が求められている。(編集部・野村昌二)

AERA 2024年6月17日号

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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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