これは2022年7月から12月にかけて行われたプログラムで沖縄タイムス、京都新聞社、信濃毎日新聞社、中国新聞社、秋田魁新報の5社が参加したが、このアカデミーが終わったあとも、この5社で定期的に自主的な勉強会を開いているという。

 そんなことから、日本でのプログラムを指揮したFT Strategiesのアジア地域の責任者であるサブリーナ・ダルヤナニ(シンガポール在住)とシニアコンサルタントの長崎勇太(ロンドン在住)に話を聞いてみた。

メディアのサブスクはECに比べて10年遅れている

 サブリーナはもともとEコマースの会社に5年つとめたあとに、メディアの生命線であるデジタルサブスクリプションの分野に転職してきた。Eコマースは、たとえばカートの位置、決済の方法、商品の見せ方等、いかに買わせるかについて徹底的に研究してきた分野だ。

「その意味でメディアの有料デジタル版のサブスクは、10年遅れている」と転身した後に思ったそうだ。ECの知見は充分メディアの有料サブスクにもとりいれることができる。

 FTに2022年3月に移ってきた時、コンサル部門が立ち上がって2年以上が過ぎていたが、それまでの活動は欧州が主で、アジア太平洋部門はまだ手がついていなかった。グーグルニュースイニシアティブと契約をむすび、アジア太平洋地区のメディアのデジタル化教育に携わるという形で、まず日本から6カ月間のコースが2022年に始まった。グーグルがお金を出しているので、地方紙は参加にあたってはお金を払う必要はない。しかし、参加の際の条件に「デジタルサブスクリプションが戦略的優先項目」であることと「担当役員のプログラムへのコミットメント」があげられていた。

「だから、6カ月間のプログラムに役員が参加した例や、販売局の方が参加した例もありました」(長崎勇太)

 1992年生まれの長崎は、もともと海城高校を卒業したあと、アメリカの大学に入学した純ジャパだが、1988年生まれのサブリーナの両親はインド出身、北西アフリカ沖のカナリア諸島(スペイン領)で育ち英国で教育をうけた。日本でこの「サブスクリプション・アカデミー」が行われた2022年7月~12月は、二人とも東京に滞在したが、サブリーナにとって日本は初めての国だった。

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