「いまは過渡期」と話す前消費者庁長官の伊藤明子さん(撮影/写真映像部・松永卓也)

 まだまだ日本社会は過渡期にあるのだと思います。休むか休まないか選択できる、自由に休んでいいといわれても、やはりそこは自由じゃない。世の中の空気がまだ偏っているから、今は強制に近いかたちで休むことを推奨しないと、本当に必要なときに必要な人が休めない。「休まないとダメって言われているから」と言わないと休みにくいのだと思います。休むのが、一般的になれば逆に「選択できる」ようになるのではないでしょうか。

「女性活躍」がなくなるのが究極の目標

――ジェンダーギャップについても過渡期かもしれません。例えば、プライム市場の上場企業の女性役員比率など女性活躍の数値目標が掲げられています。

伊藤:私の直後の均等法世代と呼ばれる年齢の女性は、せっかく企業や省庁に入れても辞めた人も多いのです。採用の門戸は開かれたけれども、その後の環境が整っていなくて。

 そもそも組織の中にいるその世代の女性の割合はかなり少ないんですよ。起業したり、国家資格を取って活躍する人が多いように思います。

――組織の中で女性が増えると、景色だけでなく人の意識も変わってきますよね。今の20代の女性と話していると、感覚が自分と違うと思うことが度々あります。ジェンダー平等が浸透している世代です。

伊藤:これからどんどん変わっていきますね。大学卒が必ずしも必要だとは思いませんが、男女格差の例でいうと、大学の進学率も私の頃は男性4割弱に対して女性は1割強で、その差は大きかった。それが今は男女ともに5割程度です。

 時間が経てば、女性の幹部は増えていくでしょう。ただ、スピードアップのためには現状の男女の差を考慮して、公平な機会が提供されるようにする数値目標などの施策が必要なんですね。

 もう一つ。地方創生という視点から気になるのは、東京圏外出身者の女性は「自分の地域は、夫は外で働き妻は家庭を守るべきという意識が強い」と思っている人が多いこと。地元はアンコンシャスバイアスが強いと思う女性が東京に出てきて、戻らない現状があります。意識が変わるためにも、社会全体で頑張る必要があります。

 今は大きな変化のための過渡期。バリアが取りのぞかれて、全員が公平な機会を最初から得られている状態があるべき姿なのです。女性活躍という言葉がなくなるのが究極の目標でしょうか。

 その頃には、私の話なんておばあさんの繰り言になっちゃいますね。

【後編】女性の「私なんて」は実は楽? 「風に当たっても自分決めたい」前消費者庁長官伊藤明子さんが管理職を選んだ理由 に続く。

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