「濃厚鶏そば(塩)」。鶏チャーシューも厚みがある(筆者撮影)

■「骨の量」に衝撃…スープを何度も何度も濾し続けた

 その後渋谷さんは鶏白湯のラーメンを集中して学んでいく。まず驚いたのはその骨の量だ。大量の鶏の骨をペースト状になるまで6時間しっかりと炊き、それを搾ってスープにしていく。

「鶏白湯は“濾す”という作業がとにかく大変です。濾して搾ってはスープを取っていくんですが、一回だと濾しきれず、ザラつきがなくなるまで何度でも濾していくんです。うま味だけを抽出するために何度も何度も濾す作業が鶏白湯を美味しくするポイントです」(渋谷さん)

 雑に扱うとそれがそのままスープに現れてしまうので、少しでも手を抜くと綺麗なスープは作れない。渋谷さんは修行しながら自分の納得のいく鶏白湯を追求し続けた。中華料理店でも修業し、2013年ついに独立の日がやってきた。

鶏そばのほか、つけ麺やチャーシュー丼、麻婆鶏丼などのメニューが並ぶ(筆者撮影)

 地元から近い久喜市の新築の物件を借りた。最寄り駅はなく、決してアクセスが良いわけではないが、大道り沿いにあり、車通りも多い場所だった。夜にお客さんが来るかは心配だったが、最悪の場合、夜は居酒屋にするつもりでいたという。こうして「中華そば 輝羅」はオープンした。

 当初は昼のみ営業だったが、地元客を中心にたくさんの人が来てくれた。しかし、その反応は渋谷さんの思い描いていたものではなかった。

「はじめはとにかく『高い』というクチコミばかりでした。当時780円で提供していましたが、それでもギリギリでした。ですが、口々に『高い』と言われ、地元の集まりに行って挨拶をすると『ああ、あの高いラーメン屋さんね』と言われる始末でした」(渋谷さん)

「輝羅」のラーメンは鶏白湯100%。何度も濾してスープを作るため、濾すたびにどんどんかさが減ってしまうのだ。思っていた以上にコスパが悪く、とても低価格で提供できるラーメンではなかったのである。

「高い」という噂とともに地元客は次第に離れていった。しかし逆にその後、「輝羅」のラーメンのクオリティに気づいたラーメンファンたちが来店し話題になっていく。おいしいラーメンはしっかりと広がっていくのである。

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