材料費は年々高騰している。そうしたなかでも「お客さんに向き合いながら、この味とこの店を守っていきたい」と渋谷さんは語る(筆者撮影)

「スープにどれだけ食材を入れたとしても、それはただの自己満足だと思います。それをどうお客さんに伝えられるかが重要です。お客さんにしっかりおいしいと感じてもらえるものを出さないと、どれだけこだわっていても意味がないんだということに気づきました」(渋谷さん)

■ブームは「鶏清湯」になったが…

 その後、ラーメン界にはあっさり系の「鶏清湯」のブームが訪れた。「輝羅」でも鶏清湯のラーメンをラインナップしたが、ブームとは関係なく鶏白湯のラーメンがいつまでも売上No.1だった。「輝羅」は鶏白湯のおいしい店として認識されたのである。ラーメンの口コミサイト「ラーメンデータベース」では埼玉の鶏白湯部門で「輝羅」は1位となっている(2024年5月13日現在)。

「鶏白湯は豚骨のように熟成などのバリエーションをつけることが難しく、他店と違いをつけづらい特徴があります。そしてクセがない分、単調な味で飽きやすいので、鶏ガラだけでスープを取るのではなく、肉を入れてふくよかさを出すなど工夫しています。鶏は扱いやすいという利点はありますが、個性をどう出すかはお店の手腕にかかっていると思います」(渋谷さん)

 大人気の「輝羅」だが、今後の課題として人手不足というのがある。現在の作り方では体力的な問題もあり、加えて、こだわりが強すぎて従業員に任せることもなかなか想像できないのが現実だ。

「『生まれ変わってもう一度この店をやるか』と聞かれたら、『同じことはやらない』と答えると思います。肉の値上げが止まらないことと、コスパがものすごく悪く手間もかかることを考えると、なかなかこれを続けることは厳しいというのが現実です。その中でお客さんに向き合いながら、この味とこの店を守っていければと思っています」(渋谷さん)

筆者撮影

 おいしい一杯を残すために、店は本当に苦労している。渋谷さんは極めに極め尽くした自身の鶏白湯を守り続けるためにこれからも努力を重ねていく。(ラーメンライター・井手隊長)

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