「御嶽山の噴火は『水蒸気噴火』といわれるものです。原因となる熱水が地下の比較的浅い場所にあり、予兆がとらえられてから噴火にいたるまでの時間がとても短い。そのため、予測が非常に難しい。このとき、予兆の火山性微動がとらえられたのは爆発のわずか11分前。山の膨らみが記録されたのは7分前でした」

 一方、富士山噴火で想定されるのは地表から深い場所にあるマグマが上昇してきて噴火にいたるケースだ。

「もちろん、予兆の把握とほぼ同時に噴火する可能性はあるでしょう。でも、数時間から数日前には何らかの兆候がまず間違いなくとらえられると思います」

 噴火が予測され、噴火警戒レベル「3」が気象庁から発表された時点で想定火口範囲周辺からの退避が求められる。それ以外の場所は大丈夫だろうか?

「幸いにして、過去5600年間、現在の市街地にあたるところまで火砕流が到達した痕跡はありません」

 ただし、積雪期の場合、山の斜面に降り積もった雪が火砕流で解けて泥流が発生し、大きな破壊力を持つ流れが短時間で川を下り、市街地で洪水のようにあふれ出る可能性がある。その危険性のある流域もドリルマップに詳しく示されており、噴火前に高台への避難が求められる。 

ハワイ島で実証された避難

 一方、噴火が予測されたとしても、巨大な富士の山体のどこに火口が開くかまではわからない。

「なので、噴火して火口の位置が特定された時点で溶岩の流れに対応した避難を行います」

 悪天時の噴火もあるだろう。火口の位置はすぐに特定できるのか?

「夜間であろうと、よほどの悪天候でなければ噴火地点を特定することはそれほど難しいことではありません。専門家が観察すれば、どの程度の溶岩が噴き出しているのか、見当がつきます。火口の位置と溶岩の量を基に溶岩流のシミュレーションを行えば、危険な領域はどこか、そこから少し離れた安全な場所はどこか、ドリルマップよりもさらに正確にわかります」

暮らしとモノ班 for promotion
育児や家事に忙しいママ・パパの味方!自宅がオフィスになるディスプレイAmazon売れ筋ランキング
次のページ
根拠は4年前に噴火した火山…