Xやインスタグラムなど、多くのSNSには過去の閲覧・検索履歴に応じておすすめの投稿を表示させるアルゴリズムが取り入れられている。欲しい情報に簡単にアクセスできる半面、自分の容姿が気になり始めると、そればかりに固執してしまうリスクは大きい。
若い世代におけるルッキズムが、
「『けっこうヤバい状況になっているな』と衝撃でした」
と話すのは、関東地方の公立高校に勤める男性教諭だ。衝撃を受けたのは昨年2月に目にした、ある美容クリニックの二重整形をすすめる広告だ。
〈たった3年の高校生活。1秒でも長くカワイイ私で過ごしたい〉
制服姿の3人の女子高生がさわやかに走る写真に、そんなキャッチコピーが躍る。10代の子どもたちに二重であることが正しいことだと植え付けるような内容に驚いたが、他人事ではないとも感じた。
「高校入学時と卒業時とでは、まるで違う顔になっている生徒もいます。特に二重整形が多い。クラスに一人とまでは言いませんが、そのくらいの感覚です」
男性教諭の学校では、今年の眼科検診で初めて「カラーコンタクトをつけている生徒が多すぎる」と医師から指摘された。生徒たちの容姿への意識が年々強まっていることを感じている。
「見た目さえ良ければ」SNSで変化した序列意識
「部活離れが進み、放課後は生徒に介入しない風潮が強まっていることも原因ではないでしょうか。子どもたちにとってはリアルよりSNSの世界でどう見られるかということが大事で、一日3時間以上SNSを見ている生徒はざらにいるのが現状です」(男性教諭)
男性教諭の勤務する学校では、数千人のフォロワーを持つ「インフルエンサー」が在籍していて、その生徒に憧れて入学してくる生徒もいるなど影響力は大きいという。
社会学者で石巻専修大学の高橋幸准教授は、SNS社会でルッキズムが加速する背景には二つの問題があると話す。
「自分の身近だと思っていた『普通の高校生』がSNSに上げる写真や動画を見ていると、無意識のうちに自分と比較してしまい、現実とメディアの世界との線引きがしづらくなります。また、Xやインスタが稼げるコンテンツになったことで、外見の良さが経済と密接になった。SNSは視覚優位のメディアなので『見た目さえ良ければ、自分もこうなれたのではないか』という序列意識も強まったのではないでしょうか」
(編集部・福井しほ)
※AERA 2024年6月10日号より抜粋