「誰一人取り残されない社会を」。SDGsの理念と共鳴するように、社会課題の解決のために活動する2000年代生まれの若者がいる。「感覚過敏研究所」を立ち上げた加藤路瑛さんだ。AERA 2024年6月10日号より。
【写真】22年に立ち上げたアパレルブランドの「パーカーとTシャツ」
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国連が採択した「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にもある「誰一人取り残さない」の理念。それを体現するかのように活動する10代の若者もいる。
加藤路瑛さん(18)は20年、13歳で「感覚過敏研究所」を立ち上げた。
「感覚過敏」とは、主に五感を中心に感覚が過剰に鋭く、日常生活に支障をきたしてしまう症状のこと。加藤さんもその症状を持つ一人で、幼いころから人に比べて鋭敏すぎる感覚に悩まされてきた。
「聴覚で言えば、教室でのざわざわとした話し声やシャーペンをカチカチする音が苦手で、視覚なら人ごみの中にいるとすぐに疲れてしまったり、頭痛がしたり。味覚は大変で、食べられるものがほとんどありません。白米は食べられるのですが、においや食感によっては体調が悪くなってしまうんです」
服の縫い目やタグが痛い。制服が重い。香水のにおいに耐えられない。日常生活のあらゆる面で苦痛を感じ、中学校は不登校になりフリースクールに転校した。
まずは言葉の可視化
SNSで感覚過敏について発信すると、自分と同じように困っている人たちからの反響があった。自分だけではなく、同じ症状を持つ人たちの困りごとを解決したい。それが研究所立ち上げのきっかけだった。
「当時は感覚過敏という言葉自体があまり知られてなく、まずは啓発活動の必要性を感じました。対策商品やサービスの開発に、さらなる研究。この三つを研究所の軸として立てました」
感覚の問題は目に見えず、周囲の理解も得にくい。まず取り掛かったのは、感覚過敏という言葉の可視化だ。キャラクターを作って缶バッジを制作。「苦手な音があります」「苦手なニオイがあります」など、五感にかかわるメッセージを載せた。