島村恭則(しまむら・たかのり)/1967年、東京都生まれ。関西学院大学社会学部長、教授。世界民俗学研究センター長。専門は現代民俗学、民俗学理論。著書に『みんなの民俗学』『民俗学を生きる』『〈生きる方法〉の民俗誌』『日本より怖い韓国の怪談』など(撮影/写真映像部・佐藤創紀)
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 AERAで連載中の「この人のこの本」では、いま読んでおくべき一冊を取り上げ、そこに込めた思いや舞台裏を著者にインタビュー。

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『現代民俗学入門 身近な風習の秘密を解き明かす』は子どもから年配の人まで楽しめる現代民俗学の入門書。トイレのスリッパから、冠婚葬祭、都市伝説まで! 身近な風習の「なぜ?」をわかりやすく解き明かす。「ご飯粒を残すか残さないかも研究対象です。他の学問で取るに足りないと思われているものでも、たどっていくと重要な考えにつながることを解明する学問です」。民俗学の親しみやすさにあふれる本書は、現時点で3刷重版が決まっている。著者の島村恭則さんに同書にかける思いを聞いた。

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「民俗学は変化しています」

 と本書の編著者で、現代民俗学の教育・研究を行う島村恭則さん(56)は言う。昔の慣習だけではなく、都市や現代の事象も扱い、民俗学は現代の人に身近になってきている。

 きっかけを作った前著『みんなの民俗学 ヴァナキュラーってなんだ?』の反響から、「20、30代がサブカルチャーの一種として楽しんでいる」という受容のされ方を知った。

 そこで今作では中堅・若手の民俗学者が世代感覚を生かして執筆し、間口を広げた。

 島村さんが世の中の人に向けて、精力的に民俗学を紹介しているのはなぜだろう?

「そもそも民俗学は在野の学問でみんなが同じ担い手です。各々の知見を持ち寄り、共有する。そこに研究者が介在すると正確な情報提供や論理的な位置づけができる。そうやって還元し、サイクルを回せたら面白いと思うんです。その手段として本を作りました」

『現代民俗学入門 身近な風習の秘密を解き明かす』(1980円〈税込み〉/創元社)子どもから年配の人まで楽しめる現代民俗学の入門書。トイレのスリッパから、冠婚葬祭、都市伝説まで! 身近な風習の「なぜ?」をわかりやすく解き明かす。「ご飯粒を残すか残さないかも研究対象です。他の学問で取るに足りないと思われているものでも、たどっていくと重要な考えにつながることを解明する学問です」。民俗学の親しみやすさにあふれる本書は、現時点で3刷重版が決まっている

 本書の冒頭で民俗学を〈人びと(=民)について《俗》の視点で研究する学問〉と定義。〈俗〉を〈権威や公式的な制度からは距離があるもの、合理性では割り切れないもの、いわば、「人間の本音の部分」に相当するものといってよいでしょう〉と書く。

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