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 7月3日に新紙幣が発行される。新しいお札はデザインが一新されるばかりでなく、世界で初めて3Dホログラムが使われたり、細かい透かし模様が入ったりするなどニセ札を防ぐための先進技術がふんだんに用いられている。紙幣が新しくなるとリサイクルのやり方も変わるのか。

【写真】これがお札から作った「現金袋」だ!!

「一番大変なのはホログラムの部分。なかなか分解できませんからね」

 そう話すのは静岡県焼津市の封筒会社「横田」営業本部の水野洋・副本部長だ。同社は寿命を終えた紙幣を日本銀行から回収し、リサイクルして現金袋を作っている。

 強みは、紙幣と水だけを使って紙の原料となるパルプを作る独自開発の技術。紙を溶かすための薬品は使わず、インクが溶け出すなどして汚れた廃水も出ない。そもそも普通の紙よりも頑丈な紙幣をパルプに再生するのも大変なのに、環境への負担も少なくリサイクルできる。

紙幣の裁断くずを紙の原料になる再生パルプに加工する機械=横田提供

ホログラムの処理に苦労

 地元の機械メーカーと協力して2年がかりで加工機械を開発(上の写真)。紙幣の裁断くずに水を練り込んだ後、ほかの古紙を混ぜることで再生パルプを作ることに成功したという。水野さんは続ける。

「日本では唯一の技術です。ほかではできません。製紙会社など大手企業も薬品を使用したり廃水を出したりすれば可能でしょうが、コストがかかるため難しいようです」

 ただ薬品を使わないこともあり、1万円札や5千円札に印刷されたホログラムの処理には苦労するという。

 同社が日本銀行から紙幣の裁断くずを引き取り、リサイクルを始めたのは2011年。以来、約13年にわたって現金袋を作り続けてきた。

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池田正史

池田正史

主に身のまわりのお金の問題について取材しています。普段暮らしていてつい見過ごしがちな問題を見つけられるように勉強中です。その地方特有の経済や産業にも関心があります。1975年、茨城県生まれ。慶応大学卒。信託銀行退職後、環境や途上国支援の業界紙、週刊エコノミスト編集部、月刊ニュースがわかる編集室、週刊朝日編集部などを経て現職。

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