「(法律の明示は)公益通報の要件ではない」

早稲田議員 公益通報のための職務を逸脱した情報収集は、この制度において禁止されているか。

消費者庁審議官 公益通報者保護法上、公益通報のために職務を逸脱して情報収集する行為については、禁止する規定はない。

早稲田議員 公益通報を行うにあたり、具体的に、どの法律の、どの部分に触れるのかを明示する必要はあるか。(明示が)要件となっているか。また、公益通報であることを通報者自身が自覚し、「公益通報ですよ」と発言することが要件となっているか。

審議官 公益通報者保護法の規定上、具体的にどの法律の、どの部分に触れるのかを明示する行為や、公益通報であることを通報者自身が認識して、その旨発言するような行為は、本法により保護される公益通報の要件とはされていない。
 

 本来の職務を逸脱した情報収集がどこまで許されるものかについては、従来から有識者の間で議論になっており、公益通報者保護法の改正(2020年)の際、検討を継続する付帯決議となっている。委員会ではこの点についてもやりとりがなされた。
 

早稲田議員 (通報者による)資料持ち出しに関する免責を含む保護について、検討すべきではないかと考えるが、見解は。

審議官 通報対象事実の範囲や証拠資料の収集・持ち出し行為に対する不利益取り扱いなどについても検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずることとされている。公益通報者保護制度検討会で議論いただく予定にしている。

 やりとりは、主に通報者側の資格や義務について交わされた。結果的に、国見町が処分の根拠としたポイントをひとつひとつ否定し、違反する具体的な法律名を示す必要がないことや、公益通報であることを意識する必要がないことが、政府参考人によって示された格好だ。

「課題を今後も注視」

 国見町の懲戒処分を取り上げた経緯について、早稲田議員にあらためて聞いた。

「この職員の通報したとおりに、町の監査委員が事業の問題点を指摘している点が重要だと思い、町の懲戒処分に疑問を持った。公益通報者保護法はまだまだ検討課題が多く、通報者保護の観点から注視していきたい」

 公益通報者保護法は2022年に改正法が施行されたが、通報者をいかにして守るかについて未成熟な面も多いとされる。消費者庁は公益通報者保護制度検討会を5月に立ち上げており、有識者による議論が今後活発化しそうだ。

(AERA dot.編集委員・夏原一郎)

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