「絶対に潰す」「辞めさせるまでいくよ、俺は」――。
日本郵便九州支社の幹部だった統括局長が内部通報者と疑う配下の局長を脅した事件が、ひとつの節目を迎えた。脅された局長ら7人が損害賠償を求めた民事訴訟で、福岡地裁が元局長ら3人に計約200万円の賠償を命じる判決を下した。
だが、内部通報で被害者となった局長の一部は、日本郵便の人事で降格となっていた。そうした「不利益」は今もそのままとなっている。
10月22日に出た福岡地裁の判決によれば、日本郵便九州支社副主幹統括局長と任意団体である九州地方郵便局長会副会長も兼ねていた元局長が2019年1月、息子の問題を通報したと疑う局長を「俺に挑戦状たたきつけちょろうが」「おう、かかってこい」などと電話し、自局の応接スペースでは「絶対どんなことがあっても潰す」「誰にも言わん、いまお前が言うたら。5人おろうが」などと脅迫。
局長による内部通報は「一致団結に背く裏切り行為」ととらえ、通報者を探し出そうとしていたと認定された。元局長は今年6月、強要未遂罪で懲役1年執行猶予3年の有罪判決を受けている。
元局長は当時、別の局長に対しても「おまえ、だれのおかげで局長になったと思ってんだ」「あんたたちを俺は局長に推薦し、試験を受けさせて合格させてきたんや」と言い、さらに「俺は辞めても(通報者を)潰す。どんなことをしても」とも責め立てていた。
一連の蛮行はすぐに日本郵便の知るところとなり、脅迫行為の2カ月後に元局長は懲戒戒告処分を受け、統括局長も解任された。
だが、通報者と疑われた局長には、他の局長たちによる完全無視やパワハラといった厳しい仕打ちが続き、うち2人の局長は地区郵便局長会を除名させられた。除名の理由は、「絶対に潰す」と吠えていた元局長への「誹謗中傷」といったものだが、福岡県の局長たちは賛成58、反対5という圧倒的多数で2人の除名を可決していた。