発達障害の人にははっきりと意思を伝えてあげることが重要だ。「暗に」とか「やんわりと」はNG。精神科医・岩瀬利郎氏の著書からその性質に応じた対処方法を解説する。
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「わかってくれるよね?」がわからないことも。
酒屋を営むASDのGさん(32歳・男性)は、繁忙期になると、近所の友人にたびたび無償で手伝ってもらっていました。先日も「また手伝ってくれる?」と声をかけたら、「別にいいけど…」という返事だったのに、後から、「こっちの都合も考えてほしい」と言われ、驚いたそうです。
おそらく友人も断りにくく、「わかってくれ」という思いを表情や声に込めたのでしょうが、Gさんには伝わりませんでした。
会話によるコミュニケーションは、約2割が言葉の情報で、残りの約8割はメタメッセージによるものと言われています。発達障害の人との会話では、そこを読み取る力が弱いことが齟齬の生じる原因となることがあります。
何かを伝えるときは、言いづらいことも、キツくなりすぎないよう配慮しつつ、ちゃんと言葉にすることが大切です。まず「結論」を話し、「理由」を丁寧に伝え、「要望」があれば添えるようにしましょう。
仕事がはかどらない2つのタイプ
物事に優先順位がつけられず、すべてを同じ比重で感じてしまったり、集中すると他のことが目に入らなくなってしまったりしがちなASDの人。
逆に、注意の持続が困難なため、意識があちこちへ飛んでしまい、ひとつのことを集中して終わらせられないことがあるADHDの人。
原因はそれぞれですが、結果として、仕事で期待される成果があげられなかったり、健康を害するほど何かにのめり込んでしまったりして、やはり周囲の人に心配をかけるなどの困りごとにつながる場合があります。
この項目で紹介する特性や、それに伴うトラブルは、よく知られている代表的なものです。無理に変わらせるのではなく、本人たちができること、得意なことを伸ばし、苦手なことはカバーしてあげる方向で対応しましょう。