宇髄はアオイたちに「上官命令」だと強い言葉を投げかけながらも、問答無用で連れ去る無茶まではしていない。また、蝶屋敷の女の子たちが宇髄に「人さらい!」と口々に叫ぶ様子、助けに入った炭治郎が「(宇髄さんは女の子たちに)群がられている?」と考え込む様子が描かれるなど、笑いを誘うコミカルな場面でもあった。

 しかし、アオイだけは終始深刻な様子で、青ざめた顔つきのまま戸惑いを隠しきれない。「役に立たない」、それでも「隊士である」という事実がアオイを苦しめる。

■鬼殺隊隊士としてのアオイの働き

 アオイが働く蝶屋敷には、鬼との戦闘で重傷を負った隊士たちがいつも運ばれてくる。切断された腕、もぎ取られた足、えぐられた目、切り裂かれた胴体、鬼の毒でただれた皮膚……。のたうちながら死んでいく隊士たちの世話は想像を絶する過酷さであろう。

 炭治郎がはじめて蝶屋敷に運ばれてきた時も、アオイはすぐさま「怪我人ですね」と言って、素早く看護態勢に入った。キビキビとしたアオイの動きは、「隠」の後藤たちに「はやいっ」と驚かれるほどだった。

 また、アオイは騒ぐ善逸に「いい加減にしないと縛りますからね」と一喝できるほどの胆力があり、剣士である炭治郎たちの回復訓練を手伝えるくらい高い身体能力も持っている。客観的に見れば、アオイが自分を卑下しなくてはならないような要因は何もないはずだ。

■本心と優しさを隠すアオイ

『鬼滅』初登場時の神崎アオイの第一声は「どなたですか!!」という怒声だった。愛らしい顔立ちにもかかわらず、彼女はいつも眉間にシワを寄せている。キリッとした表情、厳しい口調、これがアオイの印象だろう。しかし、それは本当のアオイの姿ではない。

 自分の家族が鬼に殺された経験があり、彼女の心の中には鬼への恐怖心と憎しみがある。それでもアオイは、鬼の禰豆子に優しかった。禰豆子の記憶の中のアオイは、好奇心に満ちた明るい笑顔で禰豆子を見つめている。柱合会議で破壊されてしまった禰豆子の箱を器用に直してやったのもアオイだった。この箱がないと、禰豆子は太陽光を浴びてダメージを負ってしまうことを聞いたからだろうか。盗み食いをくり返す伊之助には、特別に食事を用意してやるなど、アオイの行動は常に「優しさ」が根底にある。

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「戦いに行けなくなった腰抜けなので」