メジャーリーグでプレーする大谷翔平選手の活躍が止まらない。MLBを取材してきたライターの内野宗治さんは「大谷選手は、アメリカで野球のルールすら変えた野球史に残る絶対的なスーパースターだ。ここまで突出していると、横並びを好む日本人でも称賛することしかできないのだろう」という――。
※本稿は、内野宗治『大谷翔平の社会学』(扶桑社)の一部を再編集したものです。
なぜ日本人は大谷翔平に夢中になるのか
日本人はなぜ、これほどまでに大谷に熱狂するのだろうか?
わざわざ問うような話ではないかもしれない。大谷は日本で最高のアスリートであり、自国が生んだトップアスリートに夢中になるのは当然といえば当然だ。それにしても、近年の日本における大谷フィーバーはすさまじく、時に狂気のようでさえある。なぜ僕ら日本人が大谷に夢中になるのか、いま一度考えてみたい。
まずシンプルに大谷は、2024年の時点で世界最高の野球選手であるだけでなく、史上最高の野球選手であると言っても過言ではない。そうした事実が多くの日本人を興奮させている。
アメリカのMLB報道では、選手のことを“product”と表現することがある。たとえば野球大国として知られるベネズエラ出身の選手は“Venezuelan product”など、選手の出身地を頭につけて表記することが多い。それに倣うと大谷は紛れもなく“Japanese product”、すなわちメイド・イン・ジャパンの野球選手だ。
「世界で活躍する日本人」の最高の形態
かつて日本製の自動車や電化製品がアメリカ市場を席巻したように、大谷はアメリカ球界で旋風を巻き起こした。大谷が“Japanese product”であるという認識があるからこそ、僕ら日本人は彼の活躍を誇りに思う。
スポーツ選手に限らず、日本人が世界で活躍する姿を見るのは日本人にとって嬉しいものだ。そして大谷は「世界で活躍する日本人」を最高の形態で体現している。
また、大谷は世界最高の野球選手であるだけでなく、唯一無二の野球選手でもある。彼はMLB史上初の本格的な二刀流選手であり、現代野球では不可能と考えられていたことをとんでもなく高い次元でやってのけているのだ。大谷はナンバーワンであるだけでなく、オンリーワンでもある。