りりあんぬさんのSNSから

「今後連絡が必要になったときのために」

 りりあんぬさんは次に、ピザを配達してきた長野県にあるピザチェーンの店舗に連絡をしてみた。すると、

「対応した人は、配達員の肩を持つように、『彼にも言い分がある』『今後連絡が必要になったときのために(登録した)』と言うじゃないですか。配達員と連絡をとることは二度とありません。あきれるばかりでした」(同)

 りりあんぬさんは5月6日に顛末の詳細を自身の「X」(旧ツイッター)にポストした。閲覧数は123万回を超え(5月20日時点)、広く拡散された。

 すると、Xの投稿を見たようで、ピザチェーンのフランチャイズの店舗の責任者から7日に、「申し訳ありません」と連絡がきたという。

 責任者と話し合った結果、店舗は配達員を解雇し、登録された、りりあんぬさんの携帯電話番号やLINEアカウントの友だちについては、店長と管理者が立ち会い削除する、社内的にも厳しく注意し、再発防止策を講ずるという趣旨の話があり、とりあえずは矛を収めたと、りりあんぬさんは言う。

「配達員からLINEでメッセージなどは受け取っていないので、私がインフルエンサーとして活動していることを知っていたのかどうか、よくわかりません。しかし、Xに投稿して拡散された時点で、慌てて責任者が連絡してきたので、現在は把握しているはずです」(同)

 りりあんぬさんは、ピザ店舗とのやりとりで、コンプライアンスの欠如を痛感したと話す。
「こういう個人情報悪用の被害者は私だけではないと感じました」

「トラブルというより事件」

 取材のため、このピザチェーンの本社の担当者に筆者が連絡すると、
「(当人同士で)連絡をとって解決を、とは言いました。けれど、それ以上は話せません」
 と言うばかりだった。

 ネット事情に詳しい元検事の落合洋司弁護士は、こう話す。
「内容を聞く限り、トラブルというより事件といっていいかもしれない。刑事的に見れば、LINEを仕事で使用していれば偽計業務妨害罪になりかねない。配達のために入手した携帯電話の番号を許可なく別の目的で不正に使用していますから。民事でいうと、ピザ店側には情報管理の義務があるので、安全配慮義務に反している。『当事者同士で解決』という対応はとんでもない」

 出前などを頼む際に登録する個人情報が、簡単に流出し、悪用されかねないことを痛感する「事件」である。

(AERA dot.編集部・今西憲之)

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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