「いつまでも挿入ができない私は“異常”なのだと落ち込んでいましたが、先生の言葉で救われた。シリンジ法でネット検索すると、たくさんのカップルが活用している方法のようで、必ずしも性交しなくても妊娠の手段はあることに、まずは一安心。どうかこの方法で妊娠してほしいと願っています」(A子さん)

 複数の医師によれば、性機能障害を持つカップルに共通するのは、性交はうまくいかずとも夫婦仲が良いこと。妊娠したいという希望を機に、医療機関を受診するケースが多い。不妊治療の浸透によって、不妊相談が一般的になってきた中で、「性交ができない」という悩みが表面化しやすくなったこともある。不妊外来で患者と向き合う千村友香里医師(さくら・はるねクリニック銀座)も言う。

「今の時代、“性交と妊活は別物”と考えた方がうまくいきやすいかもしれません」

 晩婚化や女性の社会進出、共働き、現代の生活習慣、デジタルの普及……「性交ができない」妊活の背景には、さまざまな問題が絡み合っているようだ。こうした中で、「子どもは自然に授かるべきもの」と思い込み過ぎると、時に自分たちを追い詰めてしまうことにもなるかもしれない。

 A子さんが受診した医師が「珍しいことではない」と言うように、性交を試みてもできない夫婦は少なくない。後編では、性交をパスして妊活に進む「セックスレス妊活」の葛藤や悩みについて。(松岡かすみ)

後編も読む→【年々増加する「セックスレス妊活」 性外来の医師が指摘する深刻な課題とは】

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松岡かすみ

松岡かすみ

松岡かすみ(まつおか・かすみ) 1986年、高知県生まれ。同志社大学文学部卒業。PR会社、宣伝会議を経て、2015年より「週刊朝日」編集部記者。2021年からフリーランス記者として、雑誌や書籍、ウェブメディアなどの分野で活動。

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