CAの最重要任務は、機内の安全確保。今年1月2日に東京・羽田空港で日本航空機が炎上した際は、CAたちの的確な指示により乗客・乗員に犠牲者は出なかった

 機内で対応に困る乗客がいたら、「絶対的な存在」である先輩CAに指示を仰ぎ、従った。だがどんな場合でも一貫していたのが、安全第一の原則だ。離陸前にドアロックなど安全確認をしている最中は、しつこく話しかけられても作業を優先する。飛行機が揺れてシートベルト着用サインがついている間は、トイレに行こうとする人がいれば止め、温かい飲み物を求められても断る。

カスハラはなぜなくならない?

「CAはサービス要員でもありますが、一番の存在意義は安全確保です」と、きっぱり口にする中川さん。CAの足を引っ張るカスハラ行為がなくならない理由を、どう捉えているのだろうか。

「日本の航空会社は“お客様は神様”という意識でJapan Qualityのおもてなしを提供しています。ブランド価値を高め、多くのファンを獲得しているのは素晴らしいこと。でも一方で、『ANAやJALなんだからこれくらいできて当然』『前はやってもらった』と、求められるレベルがどんどん上がったり、丁寧な接客にあぐらをかいてカスハラをするお客様を生み出したりする側面もあるように思います」

 正直、現役時代は、「ここまで丁寧に対応する必要ある?」とモヤモヤしたこともあるという。長距離フライト中の“スリーピングケア”はその一つだ。食事の配膳中、眠っている乗客はすべてメモし、目を覚まし次第「お食事されますか?」と声をかける。寝ている人数が多かったり、着陸が迫っているタイミングで起きる客がいたりすると、業務に大きな負担がかかる。だが、「お客様に満足いただきたい気持ち」と「クレームになったら困るという不安」から、努めて笑顔で対応していたという。

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