
「彼女はびっくりして固まってしまったようで、『それは向こうの思うつぼ。ダメなものはダメと言わなきゃ』と伝えました。別のCAは『私なら、そこから先は別料金ですって言っちゃいます』と話していましたが、それも冗談で許していることになる。私だったら、『いかがされました?』って笑顔でつっこんでいきますね。目では『説明してみろ!』って圧をかける感じで(笑)。やっぱり保安要員である以上、なめられちゃいけないんです」
ANAは今回、カスハラ対応に統一ルールを設けたが、吉岡さんは、
「目の前で起こるカスハラ案件だけでなく、SNS社会の中で生まれる理不尽な攻撃からもCAを守れるか」
という課題も指摘する。
「実際、クレーマー客に動画を撮られて拡散された、後ろ姿の写真をさらされて『パンツの線が出ている』『お尻がムチムチ』などとコメントをつけられた、といった事例が起きています。実名が書かれた名札の着用をやめたり、機内に防犯カメラを設置したり、対応強化を検討する時期に来ているのかもしれません」
現在研修講師として活動する吉岡さんは、様々な業界で接客業に携わる受講生たちに、
「通常のクレームは貴重なご意見としつつ、理不尽な要求には応じなくていい。カスハラをする人は“お客様”ではありません」
と伝えているという。
(AERA dot.編集部・大谷百合絵)