私「なんのために?」

ママ「日頃、お客さんも女の子も運動不足じゃないですか。だから年一でこの日めがけて体を作っていくんですわ。意外な子が足が速かったり、お客さんも女の子にいいとこ見せようとして皆さん張り切ってるんですよ! もちろん賞品と表彰状も用意してね」

私「はぁ、スゴイですね」

ママ「最後は男女混合のドッジボールで締めます」

私「そうかー。それぞれの種目は男女別なんですね」

ママ「そりゃそうよ。子供らも来るしね、盛り上がりますよ!」

私「子供?」

ママ「お客さんのお子さんとか、女の子たちも子供がいれば連れてくるのもOKだし。どうかしてると奥さんを連れてくるお客さんもいますよ」

私「はぁ? 奥さん方はキャバクラなのに平気なんですか?」

ママ「だってみんなほとんど知り合いだもの! 奥さんがウチのOGだったり。女の子がお客さんの子供の子守りしてたり、楽しいわよ!」

私「……これはキャバクラを媒介とした一種のご町内運動会では?」

ママ「あー、言われてみればそうかもしれませんね!」

 そのキャバクラは地域に密着していて、働いてる女の子も地元の生まれが多い様子。「あー、あの子は誰々さんとこの三女でさー、中学ではバレー部のキャプテンだったんだわ。モテモテだったってうちのセガレが言っとったわ。三年まで同じクラスだったかんね」なんてお客さんが話していた。帰り道に連れのお客さんが「さっきの子、ここに住んでんの!」と言ってアパートの2階を指さしたことがあった。個人情報もクソもない、町内会御用達キャバクラ。

私「惜しいな。仕事がなかったら行けたのに……」

ママ「あら残念。また来年誘いますわ」

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それ以来お誘いはない