クリオスを辞め、日本初の非匿名精子バンクをつくることを決意した伊藤ひろみさん(撮影/大野和基)

「一緒に精子バンクをつくろう」

 日本の精子提供の課題は、全然解決されていない。もともとつながりのあった「プライベートケアクリニック東京」東京院の小堀善友院長に思い切って相談に行ったら、「一緒に院内に精子バンクをつくろう」と言ってくださって、カウンセラーとして働くことになりました。

 小堀先生は泌尿器科医として無精子症の手術を行ってきたので、精子提供の必要性を理解してくれていました。一緒に猛スピードで準備を進め、5月15日にオープンしました。

精子提供が人生に持つ意味

――不妊を悩む人たちへ、非匿名のドナーの精子提供を、ここで行っていくということでしょうか。

伊藤 提供精子を集めて供給するところまで当院で行い、提供精子を使った生殖補助医療(人工授精、体外受精)は当院では行いません。

 なぜ非匿名が重要かというと、精子提供を受けるご夫婦でも、子どもに早期に出生について伝え、ドナーについても知りたければ知ることができるようにしてあげたいと思う人が増えているからです。

 ドナーには安易な精子提供ではなく、精子を提供することが人生にどういう意味を持つかをカウンセリングで説明し、理解してもらいます。当院とドナーは、精子提供の終了後もつながり続けることになり、その同意が必要です。そうしたドナーを集めるハードルはとても高いですが、日本でチャレンジしたいのです。

プライベートケアクリニック東京、精子ドナーのカウンセリングルーム(撮影/大野和基)

(構成/ジャーナリスト 大野和基)

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