分娩拒否は「仕方ない」のか
―― 以前、伊藤さんの紹介で私が取材した女性カップルも、<妊娠成立のお相手>に<海外の精子バンク>と記入したら、そのクリニックでは「産めない」と言われ、別の病院に転院しています。分娩拒否は、非常に大きな問題だと思います。
伊藤 日本産科婦人科学会は、現在、海外の民間精子バンクの利用や女性カップルへの生殖補助医療の提供を、ガイドラインで認めていません。
けれども、クリオス本社に確認したら、自国で認められていない生殖補助医療を海外で受けて妊娠し、自国で出産する患者は世界中にいると言われました。自国で認められていない方法で妊娠に至ったとしても、分娩は拒否されていないということです。
――分娩拒否の理由は何でしょうか。
伊藤 日本産科婦人科学会に確認しましたが、「国が対応すべきこと」との回答しか得られませんでした。分娩拒否をした病院と関係のある産婦人科医の知人にも相談しましたし聞きましたが、「仕方がない」という反応でした。
安心・安全に出産できるよう
分娩拒否は人道的ではありません。妊婦は受け入れられ、安心・安全に出産できるようにすべきです。医師でもある公明党の秋野公造参院議員は、私たちの考えに賛同してくれました。
2023年12月18日にこども家庭庁/厚生労働省から、日本産科婦人科学会/日本産婦人科医会/日本医師会に対して、「分娩や妊婦健診等の受け入れについて」という通知が行われ、そこには「妊娠の成立過程にかかわらず、妊婦が安心・安全に出産できるよう、分娩や妊婦健診等の求めについて、適切な対応を行うようお願いいたします」と明記されています。
それでもなお、健診・分娩拒否の事例が続いたため、2024年3月7日には、秋野議員が国会でこども家庭庁の加藤鮎子担当大臣に質疑を行ってくださっています。これで、日本産科婦人科学会が認めていない方法で妊娠に至っても、安全な医療が受けられることが保障されたはずです。
(構成/ジャーナリスト 大野和基)