AERA 2024年5月20日号より

「お前、できるの?」

――質問には常に軽やかに答える。新たな役に対して「できなかったらどうしよう」と悩んだり、苦しんだりすることはないのだろうか。

草なぎ:それはありますよ。どの役も「はたしてできるのかな」と思いながら現場に入っています。例えば、国会議員秘書役を演じたドラマ「罠の戦争」も、トランスジェンダー役を演じた「ミッドナイトスワン」も、今回の「碁盤斬り」で演じた浪人・柳田格之進もそう。毎回、「大丈夫かな、できるかな」とは思うのだけれど、それをどこかで楽しんでいる自分もいるんですよね。自分に「お前、できるの?」と聞いているような感覚があるというか。

 できないかもしれない自分を、どこかでちょっと楽しんでいる。そんなところもあると思う。極端な話、最初からできてしまうもの、想像できるものって、自分が考える面白さの域を超えていかないと思うんですよ。

「もしかしたら、できないかもしれない」「このままだと、大変なことになるんじゃないかな」という“恐怖”があるから面白くなり、作品ができ上がっていくのだと思う。そうしたところを含め、楽しんでいるような感覚はあるかもしれないですね。

――俯瞰できるようになったのは、いつ頃からなのだろう。

草なぎ:やっぱり徐々に、かな。若いときは、できなくて失敗すると落ち込んだりしていましたね。悩んだりもしたし、「なんでできないんだろう」と思ったりもした。でも、徐々に「成功は一つじゃないんだ」と考えるようになった。失敗から学ぶことはたくさんあるし、失敗した方が身になることってたくさんあると気づくことができた。それに気づけた自分が偉かったですね(笑)。

 経験を積み、失敗した方が成長していると思えるようになると、“怖さ”が徐々になくなっていった。そんな気がしますね。

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